ちょっと怖い話(番外編)

ちょっと怖い話

宅配の仕事をしてた時の話です。

 

夏の終わり。

その日は小雨が降っていて肌寒い日でした。

いつも通りナビに導かれながら、住宅街をグルグル

回ってしました。

 

軽自動車1台通るのがやっとのような入り組んだ狭い

道を進んでいくと、古びた長屋が見えてきました。

(あの長屋かにあるお宅かな?)

長屋の前まで車は入っていけないので邪魔になら

ないよう車を停車し、地図を一生懸命確認していた

時です。

 

長屋の1件から白いシャツに白いズボンをはいたボサ

ボサの頭をしたガタイのいいおじさんがフラフラと

出てきました。

 

そのおじさんがゆっくりと顔を横に向けた瞬間、

私は全身の毛穴が開く感覚に陥りました。

(あかん!あの人怖い!!)

恐怖で固まっていると、おじさんの周りがみるみる

うちにモノクロに変化していました。

(早く!早くここから逃げな!)

怖いのにおじさんから目を背けられない。

 

おじさんの輪郭は黒い線のようにうねうねと小刻み

に揺れていています。

(エンジンをかけて今すぐここから立ち去れ!)

頭の中で冷静な誰かの声が聞こえてハッと我に帰り、

私はゆっくり車のキーを回しました。

 

ブルンッッ!!

その音にゆっくりとこちらに向き直るおじさん。

(やばい!早く!)

車を出す瞬間、一瞬おじさんと目が合いました。

あまりの恐怖で叫びそうになりました。

 

おじさんの目は異様に大きく見開いてギラギラして

いました。

車をぶっ飛ばして帰りたい心境でしたが、細い路地

を戻るのでスピードは出せません。

(お願い、こっちにこんといて!)

バックミラーには、こちらをじっと見つめるおじさ

んの姿が…

まるで映写機で映したような黒い輪郭のおじさん。

 

もう、この後どう帰ったのか覚えてません。

もちろん、その長屋に配達はいけませんでしたので

荷物は未配となりました。

その近所の荷物も配達できませんでした。

とにかく一刻も早くそこから遠ざかりたかった。

 

もう二度と近寄りたくないです。

あのおじさんは一体何者だったのか。

私の中では普通の人間じゃなかったのは確かです。

なぜあんなに恐怖を感じたのかは分かりませんが、

あの人が家の近くに引っ越してきたら速攻で逃げる

と思います。

未だにあのおじさんの顔を思い出すと怖くなります。

 

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