ちょっと怖い話 八朔の家のおばあちゃん

ちょっと怖い話

今日はすこーしだけ怖いお話を…
一気に書きます。

私の曾祖母は、今でいう霊媒師のような人だった
らしいです。
身体に白蛇様が降りてきて、見えない人を見たり、
見えないものを探したり、結構な透視能力があっ
たらしく、村中から相談者が訪れていたそうです。

娘である私のおばあちゃんが12歳の時に曾祖母は
亡くなったのすが、写真を撮られる事を極度に嫌
っていたので写真が存在せず、私自身は曾祖母の
顔さえ知りません。

だけどやっぱり血をひいているせいか、私自身も
小さい頃は結構不思議な体験をしました。

これは小学校2年生くらいの時のお話です。
私の母は小さなお店を経営していて、地域のおば
ちゃん達の憩いの場とかしていました。
毎日誰かがお菓子や饅頭を持ってきてお茶会が
始まります。
私にもしょっちゅう、あれ食べだのこれ食べだの
お菓子を勧めてくれるので、お茶会が始まる時間
になると、ちゃっかりお店の椅子に座って待って
いました。

ある日いつものようにおばちゃん達とお茶会して
いると、ガラス越しに私に向かって手をふるおば
あちゃんがいます。
「誰?」
私が外に出るとそのおばあちゃんは、私の家から
数メートル離れた八朔の木がある家の前で手を振
っています。
「あれ?八朔の家のおばあちゃん?いつの間に?」
不思議に思いながらも手を振っているおばあちゃん
のもとへ向かいます。

家の前の門からのぞき込むと、今度はおばあちゃん
が玄関に正座をして、籠いっぱいに入った八朔の一
つを手に取り、皮を剥きはじめました。
「いま八朔剥いてやるさかい、ここへ来て食べ。」
と言われて吸い込まれるように家の玄関に入ると
「はい、おあがり。」
と、きれいに剥いた八朔を出してくれました。
私が玄関の小上がりに腰かけて八朔を食べると、
嬉しそうにクシャッとした顔で笑って
「うまいか?」
と聞きました。
私はこくりとうなずくと、今度は少し寂しそうな
顔で
「八朔も今年で終わりやなあ」
とつぶやきました。

そうすると突然2階から物凄い大きな音と悲鳴
のような女の人の声が聞こえました。

「だれやぁ!こらぁ!なめとったらしょうちせん
ぞ!しばくぞ!お前・・・・・・!」
ドンドンドン!!

何かをぶつけるような音に驚いた私はすぐにその
場から走り出しました。
門のところでふと振り返ると、おばあちゃんが
悲しそうな顔で手をふっていました。

その日の晩、母が私と姉に
「今からお通夜やからカレー温めてたべるんやで」
と言いながら、慌ただしそうに喪服に着替えてい
ました。

「…で死んでたらしいで、可哀そうに」
「今朝見つかって…」
「役所の人が見つけたらしい…」
「誰が喪主すんの?」
「あの娘は病院で…」
母と叔母が話してる声がとぎれとぎれ聞こえます。

(この会話の内容は、はっきり覚えていた訳では
ありません。断片的に記憶にある言葉をつないで
想像しながら書いています)

2歳上の私の姉が何の気なく
「誰が死んだん?」
と聞きました。

「あの八朔の家のおばあちゃん。」

私はすごくびっくりして頭の中がぐるぐるしまし
た。
さっきあのおばあちゃんに八朔食べさしてもろた!
死んだ?なんで?どういう事?

小さな私にはうまく理解することができませんで
した。
でも亡くなったという事がどうしても信じられな
かった。
だからこっそりお通夜をやっていた公民館まで見
に行ったんです。

祭壇には、八朔のおばあちゃんが優しく微笑んで
いる写真が見えました。

大きくなってから母たちにこの時の出来事を話し
ました。

母によると、あのおばあちゃんは早くに旦那さん
を亡くされて、女手一つで息子さんと娘さんを
育ててこられたそうです。

その頃は母のお店にもちょくちょく買い物やおし
ゃべりに来ていたそうですが、娘さんが精神を
患い引きこもりのような状態になり、息子も家を
出ていき、どんどん人と距離をおくようになった
そうです。

おばあちゃんが亡くなる直前の娘さんの状態が
相当に悪かったらしく、度々役所に相談に行って
たそうです。
あの日の朝、約束の時間になっても来ないことを
不審に思った役所の人が訪ねて、トイレで亡く
なっているおばあちゃんを発見したそうです。

姉には
「八朔をもらった日とお通夜の日が、別やった
だけの話やろ?」
と言われました。

そうなんですよね。
あの日が同日だったのか、子供だったのでひょっ
としたら違う日をごちゃ混ぜにしてしまっている
のかもしれません。

だけど、おばあちゃんが亡くなったと聞いた時の
衝撃や、何かに取りつかれたように公民館まで走
った事、その時見たおばあちゃんの写真は今でも
はっきりと覚えています。

あの時、八朔のおばあちゃんは私に何かを伝えた
かったのでしょうか?
あの時、逃げずにもっとちゃんと話を聞いてあげ
れば違う状況があったのでしょうか?

今でも思い返すと、悲しみと後悔が入り混じった
ようなせつない気持ちになります。

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