別居する直前の出来事⑤

独り言

警察とは何度か電話でやり取りした記憶はあるんや

けど、夫が逮捕されてからの何日かの記憶っていう

のが物凄く曖昧で、あのゴミ倉庫の中を捜査する

っていう電話も、いつの段階やったのか覚えてない。

 

その時の電話は、夫の倉庫の捜査をするので立ち

会ってほしい、その時に奥さんからお話も聞きたい

みたいなことやったと思う。

私に拒否権などあるはずもない。

 

立ち合いの日、初めて担当の刑事さんとお会いした。

自分と同年代の男性刑事さんと30代の男性刑事さん

女性の刑事さんもいた。

威圧感を感じさせる制服姿じゃなかったからかもし

けど、皆さん物腰の柔らかい風貌やった。

 

3人に連れられて夫の倉庫に行くと、すでに倉庫の

シャッターは全開で、その前に少し強面の男の刑事

さんと、カメラをもった若い刑事さんが待っていた。

車のキーを渡されて、車を倉庫の前に出してほしい

と言われたので車を倉庫の前に出すと、すぐに3人の

男性刑事が倉庫の中に入って調べ始めた。

 

女性刑事さん「倉庫調べさせてもらってる間、車の

中でお話聞かせて頂いてもいいですか?」

私「はい。」

女性刑事さんに促されて車に乗り込み、しばらくす

るとパソコンを持った30代男性刑事さんが私の隣に

座った。

この時のやりとりはどんな感じだったかというと、

正直細かいことは覚えてない。

生活状況とか、家計管理は誰がやってるとか、借金

のこととか、夫の性格とか、結婚してから今までの

生活状況を時系列で質問されたように思う。

刑事さんが質問して、私が淡々と答えるという感じ。

そんなもの調べに調べつくしてるやろうし、おそら

夫にも同じ質問してるやろうし、私の答えを聞い

て答え合わせしているような感じやった。

 

話の流れで新しい事実もいくつか教えてもらった。

盗難のあった夜、高速を利用しているのがETC

カードの履歴に残っている。

盗難にあった倉庫までの道のりを、ナビで検索

した履歴も残っている。

高速を降りて家に帰るまでの時間帯に、倉庫に

行って犯行に及ぶことは十分可能。

警察としては、夫を犯人と断定する十分な証拠が

ありますと言いたいようだった。

 

一通り話を終えると、夫の倉庫を調べていた刑事

さんから倉庫内に呼ばれた。

「今から写真を数枚撮りますので、こんなふうに

指差ししてもらっていいですか?」

足元には、倉庫内にあった工具類が並べてあった。

それらの一つ一つを指差しした写真が撮られた。

 

言葉にならないほど不快やった。

証拠になりそうなものを押収する場合、警察

としてはそうしないといけないルールがあるの

かもしれない。

やりたくないと拒否もできたのかもしれない。

けど、自分の夫がやったかもしれない罪に対して、

罪悪感のようなものもあって、あれこれ考える

余裕などなかった。

今思うと、警察から指示されるがまま従うしかなか

った。

私は一体何をさせられてるのか?

悲しいし、情けなかったし、あの日の出来事は

一生忘れない。

 

つづく

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